成熟市場で顧客を増やすために残された手段である、紹介と口コミ。これらの行動を顧客に促すためには、ただ満足度を高めるだけでは足りません。通常の満足を大きな満足へ、さらには感動へと進化させていくことが重要です。本記事では、顧客を選定した後、いかに満足度を高め、タイミングをとらえて最上位の顧客を生み出すか、その方法を解説します。
紹介戦略の第一段階は、顧客の分類にありました。その分類の中でも最上位の紹介意向の高いSランクの優良顧客をどう生み出していくか、もしくは普通の顧客をSランクに引き上げるにはどんな方法があるのかを考える必要があります。
それを知るためには、まず企業として「そもそも何が推奨度に強い影響を与えるのか」を明確にしなければなりません。
推奨度に強い影響を与える要素として、BtoCの例を挙げると、「満足度因子」「年齢」「年収」「接触ルート」があります。これらの要素について、推奨度とどのような相関関係があるのかを分析して見つけていくことが重要です。例えば、友人からの紹介で商品を知って購入した顧客の接触ルートは「紹介」であり、これは顧客自ら、他者へ紹介することへの抵抗が少ないといえます。実際、ある会社の事例で、接触ルートが「紹介・口コミ」だった顧客は、推奨度が高く出る傾向があることが分かっています。
また、「満足度因子」についても同様に、推奨度との相関関係を分析します。さまざまな企業の分析をしていくうちに分かったのは、ある一定の項目3つすべてについて「大変満足」の高得点を出さない限り、「積極的に紹介したい」レベルには達さないことです。例えば、「品質」、「担当者の対応」、「納期」といった項目で満足度に関する顧客アンケート調査を行った場合、そのすべてが大変満足の最高評価を得られない限り、紹介意向を高めることができないということがあるのです。
このように、分析を行い、紹介意向と相関の強い要因を明確にすることが重要です。
次に、顧客が紹介行動に出やすいタイミングを知ることも重要です。当然、紹介行動に出やすいのは、顧客の満足度や関心度がとても高いときです。例えば、サービス提供後すぐの時期と、2年後では大きく推奨度が変わります。このように満足度や関心度には波があるため、サービス提供側の企業は特に満足度が高くなるタイミングを的確に捉え、紹介行動を促すきっかけを顧客に提供することが重要になります。
その満足度の波を表したのが「満足度曲線」です。
例えば、システム構築を担うIT企業の事例では、上のような満足度曲線ができます。この企業の顧客の満足度が高まるタイミングは大きく3つ。「契約直後」「システムが完成したとき」「最終確認終了後」だと分かります。この波を捉えることで、紹介行動を促しやすいタイミングでアプローチすることができます。この満足度曲線を設計することが重要です。
紹介・口コミを促進していくためには、顧客の満足度を高めるために効果的な行動を整理して、再現できるように業務フローを組んでいくことが成功のカギを握っています。
ここで、紹介・口コミを促進させている二つの成功事例をご紹介します。
ハーレーのようなバイクは低頻度商材であり、かつ高額商品です。売上を上げるためには、2台目購入を促すよりも、紹介・口コミが重要になります。そこでハーレーダビットソンは、新規顧客を取り込むための紹介構造を構築し、結果としてCLV(顧客生涯価値)だけでなく、CRV(顧客の紹介・口コミ価値)を狙っていることから、契約が年々増加しています。紹介構造の構築とは、ハーレーのバイクオーナーたちが交流するサークル、つまりコミュニティの構築です。時には家族ぐるみで参加できる気軽なイベントもコミュニティで開催され、友人を気軽に呼ぶことができます。こうした交流の場での紹介・口コミにより、新規バイクオーナーが自然と生まれているのです。
あるITシステム会社でも、顧客のコミュニティ構築を行っています。自社の既存顧客の中から特に関係性の強い数十社にネットワーク会員になってもらい、年6回、優良企業に会員が視察に行くという活動を行っています。このサービス導入企業の視察に参加する会員たちに、知り合いの企業を呼んでくることを積極的に推奨することで、以後の有力な営業先になり得ます。
紹介・口コミを促進するためには、顧客の満足度を高める施策についてタイミングを掴んで実施することが重要です。そのためには、紹介活動を促進する要因を明確にして、満足度と推奨度が高まった段階でアプローチする仕組みを構築することが重要です。