推奨度の高い顧客に紹介・口コミを促していても、いつかその顧客が持つネットワークは枯れてしまうものです。そこで企業はある行動を起こすことで、さらなる紹介・口コミの場を創出することができます。このインターネット時代だからこそ有効な手法ともいえる、コミュニティマーケティングについて解説します。
紹介・口コミの促進は、市場が成熟しているこの時代において、どのような企業にとっても重要な活動になってきています。紹介・口コミを顧客に促すために、有効な手法と言えるのが、コミュニティマーケティングです。
コミュニティマーケティングとは、一般的には、企業と顧客だけでなく、顧客と顧客も含めて「共創価値を作り上げる」方法といわれます。顧客の意見を聞きながら一緒に商品を作っていくことで、口コミが広がり、新規開拓にもつながっていきます。
コミュニティマーケティングの「コミュニティ」とは、従来の言葉の意味やイメージの通り、あらゆる“共同体”のことを指しています。人々が何かを中心に集まり、結び付いている状態です。
マーケティングにおけるコミュニティは、顧客のコミュニティのことであり、マーケティングを行う企業やブランドを中心とした集まり、結びつきです。
企業が顧客のコミュニティを作ることによる効果には、その企業やブランドのファンを醸成し、より熱狂させることができること、そして商品・サービスの新たな企画アイデアや改良点も見出すことができることなどがあります。
コミュニティマーケティングは、上手く活用することで、多くのメリットを得られる可能性があります。
コミュニティマーケティングは、紹介・口コミという観点からしても、非常に優れた手法です。
顧客の中でも推奨度が高く、人脈もたくさん持っている人は、たくさんの顧客を紹介してくれますが、いつかネットワークは枯れてしまいます。このような顧客への対応策として、会社側としては、他者への影響力を増やす、つまりネットワークを用意してあげることが重要になってきます。
Aの人はやがてネットワークが枯れ、Cになる。Aに戻すためには会社側がネットワークを用意することが必要。
具体的なイメージをつかむために、2社の実例をみていきましょう。
ペット共生マンションは、ペットと共生できるがゆえに一般的なマンションよりも費用が高く設定されていることから、入居者を集めるのに苦労するケースが多くあります。そこでH社はXさんという顧客からの幾人もの紹介を喜んでいました。しかし、やがてその人脈も枯れてしまいます。そこでH社は、定期的に開催しているペット共生マンションに興味のある人たちが集まるコミュニティイベントに、Xさんに参加してもらいました。イベントではXさんは実際の居住者としてH社の良い点を語りました。参加者はH社の営業担当の話よりも、実際の居住者の体験談のほうが、信頼を持って聞くことができたため、効果的な場になりました。
さらにXさんも、普段は直接紹介しにくい、少し関係の薄い知人たちも、イベント参加であれば誘いやすく、このコミュニティイベントに連れてきました。
つまり、コミュニティイベントにより、Xさんのような「推奨度の高い顧客への影響力の輪を広げる」、そして「新たな顧客を集める」といった効果が得られたのです。
いわゆる「ハーレー」のバイクを販売するハーレーダビッドソンは、バイクオーナーたちを集めたコミュニティを企業が主導する形で運営しています。しかしハーレーは低頻度かつ高額商品であるがゆえに、どうしてもすぐに紹介済になってしまいます。そこで年に数回、家族連れなどでも気軽に誰でも参加できるイベントを開催しています。このイベントはハーレー初心者にとってハードルが低いことから、バイクオーナーたちが気軽に知人たちを集めやすい場になっています。
このイベントは、H社の事例同様に、少し関係の薄い知人を誘うことができるメリットのほか、知人友人を直接誘うことに抵抗のある場合でも、フランクなつながりのコミュニティの場には連れていきやすいというメリットも得られます。
ハーレーダビッドソンは、こうして企業主導でフランクなコミュニティを作るのが非常にうまい企業の一つです。
この2つの事例のように、コミュニティを作ることを企業側がイベント開催などで誘導することで、紹介・口コミの場ができあがっていきます。コミュニティマーケティングは “直接紹介しにくい”知人友人のつながりが多い傾向がある、今のインターネット時代にこそ、有効な手法と言えます。
コミュニティマーケティングは、ネットワークがいつかは枯れる推奨度の高い顧客に対して、そのネットワークを広げるだけでなく、新規顧客まで呼び込める有効な手法です。コミュニティづくりの場の提供は、企業主導で実施していくことが重要になります。