営業スタッフの報酬制度は、経営者にとっても営業のマネージャーにとっても、そして営業スタッフにとっても大きな関心事です。それと同時に報酬制度は、設定の仕方によっては自社の最も強力な道具となるものです。そこで今回は営業スタッフのモチベーションを高める営業報酬制度の効果や評価の基準について解説します。
理想的な営業報酬制度は、業種や会社の成長段階によっても異なりますが、ここでは一般的に有効と言える3つの営業報酬制度とその効果を挙げます。
ハンティング制度は、営業活動における「新規獲得」の評価基準です。営業スタッフがハンティングをして勝ち取った金額に応じて報酬を与えるというものです。例えば、営業スタッフが新規顧客獲得に際して生み出した収益の倍の金額の歩合を支払います。これにより、営業スタッフのモチベーションが上がり、彼らはハンティングに勤しみます。ただしこの方法は「顧客離れ」という副作用があります。もし顧客が数ヶ月で解約した場合は、営業スタッフから歩合を取り戻すというルールも必要です。
カスタマーサクセス制度は、「顧客の成功」を基準とする報酬制度です。つまり顧客がその商品・製品を購入して、成功したかどうかということに評価の基準を設けます。ですから、顧客獲得ではなく顧客維持率の優れていた営業スタッフに歩合を与えます。これにより顧客離れは減少します。
カスタマーコミットメント制度とは「顧客からのコミットメント」を基準とする報酬制度です。言い換えれば、顧客がどれだけ自社の商品や製品に対して利用する意思があるかどうかということです。例えば月払いと年間一括払いが選べるITツールが商材の場合、「月払いでとりあえず使ってみて、効果が出るか試したい」という顧客よりも「年間一括払いでとことん使いたい」という顧客のほうがコミットメントが高いと考えられます。つまりこの報酬制度では、契約が継続するたびに報酬が得られ、はじめから年間一括払いを勝ち取れば一気に報酬が得られます。
例えば、契約を勝ち取ったら、その収益に応じた金額を営業スタッフへ支払うのに加えて、歩合を顧客の契約の長さによって付与します。例えば初月の契約を勝ち取れば、その支払金の50%、6ヶ月継続すれば、その支払金の25%、12ヶ月継続すれば、その支払金の25%のように設定します。
この場合、一つの顧客から全額歩合を得るためには1年間に渡って契約を継続しなければならないですし、早急に歩合を得たい場合には、年間一括払いの契約を獲得する必要があります。このカスタマーコミットメント制度にすることにより、営業スタッフは年間一括払いの契約獲得に狙いを定めるため、より長期的な契約が促され、顧客離れを改善することができます。
このように営業報酬制度は自社の業者のビジネスの段階によって設定することが重要です。
営業報酬制度を評価するためには、次の3つの基準がポイントになります。
その報酬制度の歩合が営業スタッフのモチベーションに直結しているかが重要です。わざわざ計算機を用いて計算しなければならない複雑なものだとモチベーションに直接響かないことがあります。報酬制度の仕組みはシンプルにする必要があります。
報酬制度は目標と適切に一致させることがポイントです。まず自社の目標を確認し、その目標を達成するためにどのような営業報酬の制度を立案すれば良いかという順番で考えます。これにより、報酬制度を強力な道具にすることができます。
営業スタッフの成功に対して、とにかく迅速に報酬に反映させることが重要です。報酬制度の影響力を強めるためには、失敗したら顕著に金額が下がり、成功したら顕著に金額が上がるという結果を、できるだけ早く営業スタッフへ目の当たりにさせる必要があります。
報酬制度の設計をより営業スタッフのモチベーションに結びつけるためのポイントとして、営業チームを関与させることが挙げられます。
営業チームに新報酬制度にする理由と目的を事前に告知することで、営業スタッフは、制度の変化への心の準備ができます。
営業スタッフの考えをよりよく理解し、彼らの関心事を明らかにし、彼らが最も強く感じていることを把握することが、よりよい報酬制度を作るために役立ちます。
営業スタッフのモチベーションに直結する営業報酬制度は組織の強い道具となり得ます。今回ご紹介したポイントを押さえ、一度、報酬制度を考え直してみてはいかがでしょうか。